11 Août 2022

 夕方ポンピドゥーセンターに行った。駅で切符をどっかにやってしまいきょろきょろしていたら、年齢不詳に話しかけられた。〈出してあげるよついてきな〉と助けてもらった。〈どこ行くの〉と聞かれ、ポンピドゥーやと答えると〈は?〉って顔をされたので、写真を見せると納得した様だった。〈元大統領のジョルジュ・ポンピドゥーのことかと思った〉と。シャトレ駅で行先ポンピドゥーと言ってなぜその発想をするのかわからない。気になっていた年齢を聞くと17。若い。〈いくつ?〉と聞かれ23と言うと〈若いね〉と言われたので、いやあんた17やんと言ったら、パリに来る学生は大体25くらいだからと大人な返事が返ってきた。会話しているうちに一緒にポンピドゥーを回ることになった。一人で静かにじっくり見たかったのに全く叶わず、目や思考がぼやけたので再訪することを胸に誓う。ただ、一目見たとき、中に入った時の感動は確かにあった。

 

 少年をどう撒こうか考えているところに、同じ日本人留学生から夜ご飯の誘いが来たので、ポンピドゥーも静かに見れないしそちらに行くことにした。電話口で状況を話すと、「ガイド料と称してお金取られるから逃げな」と言われ、そんな発想はなかったので少し焦る。けれど目の前にいる〈ケンワタナベは最高だ〉〈naked ムラニシを知っているか?〉〈ヤクザは指切りをガチでするのか?〉〈第二次世界大戦以降ヤクザは警察になったんだろ?〉と質問してくる底意地悪くは見えない少年を疑うのは忍びない。予定があって行かなきゃと伝えると、日本人留学生の待つ駅に向かうホームまで送ってくれて、シンプルにいいやつだった。ありがとう。

 

 日本人留学生のいる場所はラヴィレット公園のすぐそばで、21時くらいにラヴィレットの野外映画祭に行った。ラヴィレットは家の周りとは雰囲気が異なり、人が生活している感じがした。裏を返せば生活環境としてパリ中心地は胡散臭い。陽も落ちた公園に赤いライトアップされたチュミ。奥に行くと映画祭が行われていて、芝の上で大勢の人が連れ添って寝そべり、仮設の巨大スクリーンを眺めていた。上映されていた映画はEDEN。若いDJの話らしい。映った部屋のインテリアの中にDAFT PUNKの文字を発見し、静かに感激。いつまででもいれたが、そろそろ行くかと離れようとしたとき、私たちのOne More Timeが流れた。死ぬ。大音量で大勢が、ここパリでダフトパンクダフトパンクを聞くとなぜこんなに胸が熱くなるんだろう?ジャンヌーベルのフィルハーモニーも外観だけ確認した。overwhelmingタイプの建築だった。中も見てみたい。そろそろ終電なので帰路につこうと、再度スクリーンを通りかかると、Veridis Quoが流れた。泣くからやめてほしい。